Friday, March 5, 2010

Thomas Gainsborough その2

当時のイギリスの商人など、中流クラスの人々の間では既存の宗教観を否定的に見る傾向があり、ゲインズバラ家も例外ではなくメソジスト派でした。より豊かな家庭に見られるような豪華で贅沢な生活を否定し、どちらかというと質素堅実、自然な心情や感情を大切にする宗派です。そういった宗教と家庭環境の影響だとも言われますが、ゲインズバラは風景画を描くのが好きな子供でした。
この彼が長じて肖像画家として名を馳せたのはちょっと皮肉にもみえますが、メソジスト教徒らしく、じっと耐えていたのかもしれません。

1730年代初めにゲインズバラのお父さんは事業に失敗して財産を失い、郵便局長なります。この転落を期にゲインズバラは、将来は版画家として独り立ちする目的で、ロンドンに出て版画家の元に弟子入りします。イギリスは本など出版物の量が多く、挿絵画家として生活をしていくことが可能だったのです。江戸の日本ならさしずめ版木彫りの親方に弟子入りするようなものでしょう。

ゲインズバラが生まれ育った家は、大家族にふさわしくたっぷりと広さのあるものです。現在は博物館として一般に公開されてますが、この家に彼の家族が、経済難に見舞われても住みつづけられたのは、彼の親戚で有力者でもあったジョン・ゲインズバラの支援のお陰だといわれます。

上はその親戚の肖像で、ドイツ人肖像画家、ジョン・テオドール・ハインスの作。1731年の作です。これはゲインズバラが初めて目にした肖像画で、影響を与えたのではないかといわれており、先に紹介した彼の自画像は、この肖像画の謹厳で堅苦しいスタイルを真似ているようです。
John Theodor Heins (1697-1756) : Portrait of John Gainsborough, c.1731

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